働くコラム

予期できない収入減に備えて知っておきたい補助金、減免制度

予期できない収入減に備えて知っておきたい補助金、減免制度

年初から世界中を襲っている新型コロナ感染症、毎年のように大きな被害をもたらす自然災害など、予期できない事態で大幅な収入減や収入停止となり、家計にダメージを受けることはあるものです。

 

子どもの教育資金や住宅ローンの返済など、40代の人のなかには家計収支に余裕がない人も少なくなく、普段から節約や貯金などに努めていても家計はたちまち困難な状態になりかねません。

 

今回の新型コロナ感染拡大でも補助金や減免制度には多くの人が注目していると思いますが、いざという時に家族と自分の生活を守れるよう、普段からどのような経済援助制度があるかを知っておきましょう。

 

1.いざという時の経済援助、情報力と行動力がカギ

 

新型コロナ感染拡大による経済援助制度では、国民1人当たり一律10万円の現金を給付する「特別定額給付金(仮称)」や、フリーランスを含む個人事業主など売上が大きく落ち込んでしまったときに受け取れる「持続化給付金」など、個人に対する補助金・支援金制度が数々設けられています。ニュースなどでも毎日のように取り上げられていますから、知っている人も多いと思いでしょう。

 

一方で、これらの補助金・支援金制度は個人を対象にしたもの、事業主を対象としたもの、子どもがいる世帯を対象としたもの、働き方で対象者が限定されるものなど、さまざまな制度があり、逆にわかりにくい、申請しにくいということもあります。

 

実際に申請するにはあらかじめどのような援助策があり、どこに確認・申請すれば良いのか大枠を掴めておけばスムーズに申請手続きができます。

自然災害に備え防災セットを用意しておくように、大まかでも構いませんので経済援助制度と連絡先のリストを作成しておきましょう。その時になって対応可否をアレンジさせながら確認することができるはずです

 

とはいえ、どんな援助があるのかわからない状態でリストを作るのは簡単ではありません。そこでおすすめなのが自分の家計費目を書き出し、その対策法を書き込んでいく方法です。あくまで一例ですが、次の表のようにまとめても良いでしょう。世帯の必要支出に合わせて項目を書き込んでいってください。補助金はその時々で新設されるものもありますから、空欄にしておいても構いません。

 

非常時の経済援助一覧表の作成例

 

援助制度

備考

窓口

もらう

補助金・給付金

 

 

 

失業給付

非常時の特別措置で一時休業時にもOKか確認

ハローワーク

Tel:xxx-xxx-xxxx

 

傷病手当金

病気やケガで3日以上続けて休んだとき

健康保険

Tel:xxx-xxx-xxxx

借りる

生活福祉資金貸付制度

非常時の特別措置で一時休業時もOKか確認

市区町村の社会福祉協議会

Tel:xxx-xxx-xxxx

 

契約者貸付

非常時の特別措置で利息の特別取り扱い確認

○○生命保険

Tel:xxx-xxx-xxxx

住宅ローン

・返済特例(返済期間延長)

・返済条件変更手数料免除

 

□□銀行

Tel:xxx-xxx-xxxx

電気料金

支払期限延長

 

△△電力

Tel:xxx-xxx-xxxx

ガス料金

支払期限延長

 

△△ガス

Tel:xxx-xxx-xxxx

水道代

・減免

・支払期限延長

 

市区町村の水道担当

Tel:xxx-xxx-xxxx

保険料

保険料払込み猶予

 

○○生命保険

Tel:xxx-xxx-xxxx

・・・

 

 

出所)筆者作表

 

生活をしていくためには収入を確保し、支出を抑えることが必要です。ここから先は、「もらえるお金」「借りられるお金」「支払い猶予・減免制度」について説明していきます。

 

2.もらえるお金

 

失業給付

 

雇用保険の基本給付(失業給付)は、本来雇用保険に加入要件を満たした人が失業した際に受けられる給付金です。しかし非常時には、休業(一時的な離職)の場合でも「みなし失業」として失業給付金を受け取れる場合があります。この特別措置は東日本大震災の際、災害により休業または一時的に離職を余儀なくされた人が受給できるようにしたものですが、今回の新型コロナ対策でも政府は同様の措置の検討をしています(202057日時点)1

 

新型コロナ対策では、生計維持のための貸付けとして「緊急小口資金(主に休業した人向け)」と「総合支援資金(主に失業した人向け)」の2つの融資制度が設けられました。休業状態になくても収入の減少があった場合に借り入れできるというのは心強いのではないでしょうか。

 

休業された方向け

主に休業された方向け

出所)厚生労働省「一時的な資金の緊急貸付に関するご案内」

 

失業された方向け

主に失業された方向け

出所)厚生労働省「一時的な資金の緊急貸付に関するご案内」

 

緩和条件、利子や保証人の取り扱いなどは、非常事態時の家計への影響などで変わります。お金を借りることに躊躇してしまう人もいると思いますが、非常時の救済措置として知っておきたい制度の一つです。

 

契約者貸付

 

解約返戻金のあるタイプの生命保険に加入している場合、解約返戻金の一定の範囲内で、契約者貸付を受けることができます。貸付をうけても、保障や配当金を受け取る権利は継続します。

 

貸付を受けると通常は利息がかかりますが、非常時には期間を設けて利息を減免する保険会社もあります3。一般的なローンや融資制度と異なり、定期的に返済する義務はなく、満期時あるいは死亡時などの契約が消滅する際にまだ完済していない場合は保険金から貸付金と利息が差し引かれます。契約したとおりの保障額を受けるためには早めに返済しておくことが望まれますが、これも非常時の救済措置として知っておきたい制度の一つです。

 

なお、掛捨型の定期保険、解約返戻金がない代わりに保険料が低く抑えられている医療保険等や、貯蓄型でも契約からの経過年数が短く解約返戻金が貯まっていない場合には契約者貸付を利用できません。

 

3.支払い猶予・減免制度

 

住宅ローン返済特例

 

住宅ローン返済は家計のなかでも大きな割合を占める支出です。収入減で返済が困難になりそうな場合には、住宅ローンの返済プラン変更を借り入れしている金融機関に相談してみましょう。

 

新型コロナ対策では、住宅金融支援機構の「フラット35」では返済期間を最長15年間延長する返済特例制度に応じています4。住宅ローンの返済期間を延長すると毎月の返済額を減らすことができます。返済総額は増えることになりますが、困難な状況を乗り越えた後に少しずつ繰上げ返済をしていけば利息負担を減らすことも可能です。

 

また、民間の金融機関でも住宅ローンをはじめローン返済条件に関する相談を受けつけています5。返済条件を変更する際には通常、手数料がかかりますが、非常時の特別措置として変更手数料を無料化する銀行もあります6。まずは返済を延滞しないことに重視して、借り入れしている銀行に相談しながら状況を乗り切る対策を取りましょう。

 

家賃支払い猶予

 

賃貸契約の人は、家賃の支払いを一定期間猶予してもらえる可能性があります7。契約している不動産管理会社に確認してみましょう。

 

住宅確保給付金

 

失業などで収入が減り、家賃が払えず住居を失うおそれがある場合に、住宅確保給付金を受け取れる可能性があります。住宅確保給付金は原則3カ月(求職中なら最長9カ月)の家賃相当額が国から支給されるものです。本来は、離職・廃業から2年以内の人が対象ですが、今回の新型コロナ対策では本人の都合によらない休業で収入が減少し、離職・廃業と同程度の状態にある人も対象となっています8_12。居住している市町村の自立相談支援機関へ問い合わせてみましょう。

 

住居費に関する援助策

住宅ローン

家賃

・返済期間延長

・ボーナス返済取りやめ

・借入金元本返済据置

・返済条件の変更手数料免除

など

・賃料支払い猶予

・住宅確保給付金

など

出所)筆者作表

 

電気代、ガス代、水道代

 

電気・ガス・水道などの公共料金については、支払い期限が一定期間延長される特別措置があります。新型コロナに関しては、電気代、ガス代について緊急小口資金又は総合支援資金の貸付を受けた人は料金支払い猶予を受けられます9。上下水道代は支払い猶予のほか、料金支払いを減免する自治体もあります10

 

生命保険料・損害保険料

 

保険料払込が困難な場合は、生命保険および損害保険会社では、保険料払込猶予期間を延長する措置をとることがあります。新型コロナ対策では、生・損保会社ともに、保険会社が定める日から最長6カ月間の保険料払込猶予期間の延長措置が実施されています11。ただし、自動的には猶予されず、保険契約者からの申し出が必要です。

 

4.ライフラインの確保を優先し、あとはゆっくり対策を練る

 

予期せず収入が低減し、非常事態の渦中におかれてしまうと大きな先行きの不安があると思います。今回さまざまな家計援助制度を紹介しましたが、非常時に混乱するのは政府や自治体も同じです。新たな補助金制度ができても、個人がお金を受け取ることができるまでに時間がかかってしまうこともあります。

 

まずは住居、水道、電気、ガス、もしもの場合の保険など、素早く支払い猶予などの手続きをして家計支出を抑えることと併せ、ライフラインを確保するための行動を取りましょう。せっかく猶予、減免制度があっても知らずに手続きしなければ退去を求められたり、電気・ガスが止まったり、保険が失効してしまう可能性もあります。

 

ライフラインが確保できていればとりあえずは安心です。あとはゆっくり収入を得るための対策を練っていきましょう。

 

参照データ
*1:日本経済新聞「休業者に「失業手当」 コロナで特例、個人申請で迅速に」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58819930X00C20A5MM8000/
*2:日本FP協会「災害に備える くらしとお金の安心ブックPart2」
https://www.jafp.or.jp/personal_finance/fresh/anshinbook/files/anshinbook_2.pdf
*3:日本生命「新型コロナウイルス感染症に関する各種取扱いについて」
https://www.nissay.co.jp/news/2019/pdf/20200317.pdf
*4:住宅金融支援機構「今般の新型コロナウイルス感染症の影響によりご返済が困難になっているお客さまへ」
https://www.jhf.go.jp/files/400352693.pdf
*5:全国銀行協会「新型コロナウイルスの影響でお困りの皆さまへ」
https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/topic/covid19/covid19_leaf.pdf
*6:広島銀行「新型コロナウイルスに関する 「休日融資相談窓口の設置」および「融資関連手数料の無料対応」について」
https://www.hirogin.co.jp/ir/news/paper/news200316-1.pdf
*7:大東建託パートナーズ「新型コロナウイルス感染症の 影響に伴う賃料支払猶予の申請について」
https://dk-kurashi.com/rent_payment_postponements/new
*8:厚生労働省「生活を支えるための支援のご案内」
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000622924.pdf
*9:経済産業省「新型コロナウイルス感染症の影響を受け、電気料金の支払いなど生活に不安を感じておられる皆様へ」
https://www.meti.go.jp/press/2019/03/20200319008/20200319008.html
*10:尼崎市公営企業局「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた水道料金等の減免について」
https://amasui.org/watercustomer/guide/price/2000821.html
*11:生命保険協会「新型コロナウイルス感染症に係る特別取扱いについて」
https://www.seiho.or.jp/info/news/2020/20200317.html
損害保険協会「新型コロナウィルスへの対応について」
https://www.sonpo.or.jp/news/covid-19/index.html

 

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