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高収入を目指す薬剤師の転職 どこで探す?年収はキャリアに比例?など疑問を解説

高収入を目指す薬剤師の転職 どこで探す?年収はキャリアに比例?など疑問を解説

一般的に、サラリーマンの平均年収は都市部で高く、都市部の大企業に就職することが高収入に繋がりやすいというイメージをお持ちの人も多いのではないでしょうか。

しかし、医療職、特に薬剤師については必ずしもこの法則はあてはまりません。

 

実際、2020年度における薬剤師の都道府県別平均年収を見ると、上位にランクインしているのは首都圏ではなく地方の県であることがわかります*1

 

全国の薬剤師年収ランキング

参考)マイナビ薬剤師「全国の薬剤師年収ランキング」*1を参考に筆者作成(https://pharma.mynavi.jp/income/)

 

もちろん、いずれの都道府県であっても、資格や経歴、役職などに応じて高収入を得られる職場はあるでしょう。

また、順調にキャリアを積み上げれば、将来的に今以上の収入を期待することもできます。

しかし、上手に職場を選べば、今すぐにでも年収アップを図ることが可能になるのです。

 

そこで今回は、高収入が得やすい薬局の探し方と、転職する際に注意すべきことを解説します。

 

1.高収入を得たい薬剤師は「薬剤師過疎エリア」をねらうべし!

年収アップをねらって転職を希望する場合は、「薬剤師過疎エリア」での就職を視野に入れましょう。

 

「薬剤師過疎エリア」とは、字のとおり薬剤師数が少ない地域のことです。

人口の少ない地方では当然のことながら薬剤師は少なくなりますが、薬剤師の需要は医療機関の密集度や処方せん枚数により変化します。

 

収入アップを目指して職場探しをする際は、単純に「人の少ないところをねらう」のではなく、「人口に対して薬剤師の人数が少ないところをねらう」のがポイントです。

 

 

①リゾート地

海や山など、自然の雄大さや美しさなどを活かしたリゾート地は、交通の便は比較的良いものの定住している人の数は比較的多くありません。

そのため、医療機関や薬局、ドラッグストアなども少なめであることが多くなっています。

また、地元出身の薬剤師によるUターン就職や、移住目的の薬剤師によるIターン就職も少なからずあるため、薬剤師の求人数はそれほど多くありません。

 

その一方で、少人数で運営している薬局が多く、1人でも薬剤師が減ると薬局の存続にかかわる場合もあるため、給与が比較的高めに設定されているケースが多くみられます。

 

<転職成功例>

転職者プロフィール:30代男性・サーフィンが趣味・薬局を開くのが夢

たびたびサーフィンの世界大会がおこなわれるリゾート地近くの薬局に、3年間の契約で就職。

海辺近くに借り上げ社宅を用意してもらい、趣味のサーフィンを満喫しつつ、給与・賞与をしっかり貯金。

契約終了後、3年間かけて積み上げた資金で薬局を開設。

 

②へき地

交通の便が悪く、人口も少ない地域では、医療機関も薬局も少なめです。さらに、人口の流出が続いているエリアでは、Uターン就職やIターン就職を希望する薬剤師も少なく、常に薬剤師が不足しているため、求人は比較的見つけやすくなっています。

 

特に、最寄り駅から遠く車での移動が必須となっているところ、季節により交通路の遮断が予測される土地などは競争率が低いため、ねらい目です。

 

<転職成功例>

転職者プロフィール:40代男性・子ども3人・雪国出身

子どもたちの進学に備え、年収アップをねらい豪雪地帯の薬局へ転職。

冬になると雪で通勤が大変だが、冬季手当が出るので満足している。

また、転職後すぐに管理薬剤師となったため、当初の予定より収入が増え、家族からも感謝されている。

 

③人口に対して薬剤師数が少ないエリア

人口が比較的多く、医療機関や薬局もそれなりにあるものの、都市部から離れているケース。

あるいは薬学系大学から遠いなどの理由で薬剤師が集まりにくい地域も、「薬剤師過疎エリア」の一つといえます。

 

このような場所は交通の便が良いところが多く、薬局が駅から徒歩圏内にあることも少なくありません。

ただし、リゾート地やへき地のように切羽詰まった事情は少ないため、住宅手当や借り上げ社宅は望めない可能性があります。

 

④その他高収入がねらえる薬局

一時的な収入アップをねらうのであれば、新規オープン予定の店舗に派遣薬剤師として勤務するのも良いでしょう。

新規店は非常に忙しく、即戦力となる薬剤師が必要であるため、質の高い薬剤師を集めるために期間限定で高時給を設定している場合があります。

 

また、薬剤師国家試験の合格率が悪い年は、合格発表日以降に高時給の求人が急増します。

特に、新卒者を大量に採用する大手チェーン薬局では破格の時給で求人が出ることもあるため、要チェックです。

ただし、高時給でスタートしてもその後の時給が順調に上がるとは限りません。

人手不足が解消されれば、時給の大幅なアップは望めないことを覚悟しておきましょう。

 

<転職成功例>

転職者プロフィール:20代女性・海外留学をしたい

調剤薬局で数年間働いた後、派遣薬剤師になる。

海外留学の資金を積み立てるため、時給の高い新規開店薬局への派遣を希望。

3カ月サイクルで次々と派遣先を変わった。

ある程度資金がたまったところで半年ほど留学。

帰国後、派遣薬剤師として再度働き、1年おきくらいに短期留学をくり返している。

 

⑤高収入がねらえる薬局の特徴 まとめ

リゾート地 ・求人自体は少なめ。
・リゾート地でも、近くに薬学系大学があると高収入は望めない。
・場所によっては、引っ越し手当・住居手当・借り上げ社宅などがつく。
へき地 ・求人数は少ないが、求人自体が途切れることはあまりない。
・特別手当(冬季手当・寒冷地手当など)がつく場合がある。
・場所によっては、引っ越し手当・住居手当・借り上げ社宅などがつく。
・社用車やガソリン代が支給されることもある。
人口に対して薬剤師数が少ないエリア ・求人は多いが、条件の良い求人はすぐに埋まるため、こまめなチェックが必要。
・引っ越し手当・住居手当・借り上げ社宅などがつかない場合も多い。

 

 

2.高収入がねらえる薬局へ就職する際の注意点

 

収入アップのみをねらって就職・転職すると、後悔する可能性があります。

就職先の特性を知り、短期間で転職をくり返すことがないように備えましょう。

 

①期間限定で働きたい場合は、就職の面接時にはっきり伝えておく

留学や開業資金調達など、高収入を求める理由が明らかで、期間限定で働きたい場合は、その旨をあらかじめ雇用先に伝えておきましょう。

ポジティブな理由であれば、就職を断られることはあまりありません。

また、よほどの短期間でなければ次の薬剤師を探すことも可能なため、退職時期をはっきりさせておくのは雇用先にとっても好ましいことです。

 

②薬剤師過疎エリアでは、休みの取りやすさも要注意

店舗における薬剤師の人数が少ない場合、休暇が取りにくいことがあるため注意しましょう。

特に、一人薬剤師店舗では休むのが難しく、急病であっても応援が来るまで勤務を強いられる場合があります。

応援体制の有無やシフトをしっかり確認し、無理のない勤務体制であるかどうかをチェックしましょう。

 

③リゾート地の薬局へ就職する前に知っておきたいこと

リゾート地では、保険証を持たずに医療機関を受診する人も少なくありません。

保険証がない場合は全額自己負担となりますが、後日手続きをすれば払い戻しを受けられるため、対応の仕方を知っておくと役に立ちます。

 

また、場所によっては外国の方が来局する場合もあるため、英語で服用方法などが説明できるようにしておくことも大切です。

 

さらに、一時滞在の方が来局した場合、継続フォローが難しいケースもあります。

治療の継続や再受診をうながすコミュニケーションスキルも、大変重要です。

 

④へき地や地方都市の薬局へ就職する前に知っておきたいこと

医療機関が少ないエリアでは処方せんの集中率が高く、患者数の多い医療機関の門前薬局では薬剤師1人あたりの処方せん枚数が上限ギリギリの場合もあります。

必ず常勤の薬剤師数と繁忙期の処方せん枚数を確認し、残業がどの程度あるかもチェックしましょう。

 

へき地など人の出入りが少ない地域では、言葉の違い(訛り・方言など)や苗字などからよそ者扱いされ、患者さんに受け入れてもらえるまでに時間がかかる場合もあります。

患者さんだけではなく勤務先の同僚や先輩とも積極的にコミュニケーションをとり、方言や地域特有の文化などを理解する努力も、時には必要です。

 

また、薬剤師の少ない土地では、薬剤師同士のつながりが密な場合もあります。

薬薬連携では大きなメリットとなりますが、仕事とプライバシーを分けたい人には少々わずらわしいかもしれません。

人材紹介会社などを利用しても、このような情報は得にくいため、要注意です。

 

 

⑤高収入がねらえる薬局へ就職する前に知っておきたいこと まとめ

リゾート地 ・保険証を持っていない患者さんが来局することがある。
・外国人の患者さんが来局することがある。
・継続フォローが難しい場合がある。
・かかりつけ薬剤師の制度が利用されにくい。
へき地 ・訛りや方言に苦労することがある。
・一人薬剤師の店舗が多い。
・薬剤師数が少ないため、休みが取りにくい場合がある。
・雪などで道路が寸断されると、家に帰れないことがある。
・車がないと移動が不便な場合が多い。
人口に対して薬剤師数が少ないエリア ・働き方自体は都市部とあまり変わらない。
・薬剤師同士のつながりが密な場合もある。

 

3.収入には義務と責任がともなうことを忘れずに

 

高収入が得られる薬局への就職・転職は、非常に魅力的です。

しかし、収入にはそれ相応の義務と責任がともなうものです。

 

どれほど薬剤師不足であっても、スキルが未熟・人とコミュニケーションをとろうとしない・急な休みが多い・シフトの調整に応じないなど、雇用側のニーズに合わない働き方では、契約期間満了時に次の契約をしてもらうことができません。

また、たとえ正社員として採用されていても、昇給は望めません。

 

薬剤師としての職責を果たし、雇用側から「昇給したい」と言われるような薬剤師を目指しましょう。

 

 

参考文献・参考サイト
*1参考)マイナビ薬剤師「全国の薬剤師年収ランキング」
https://pharma.mynavi.jp/income/
執筆者
名前:中西 真理
プロフィール:公立大学薬学部卒。薬剤師。薬学修士。医薬品卸にて一般の方や医療従事者向けの情報作成に従事。その後、調剤薬局に勤務。現在は、フリーライターとして主に病気や薬に関する記事を執筆。
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