育児休業を取得する男性は徐々に増えています。
国は男性の育児休業を支援しており、最近では小泉進次郎環境相の育休取得が話題になりました。
しかし、「子育てに積極的に参加したい」という気持ちはあっても、今後のキャリアアップを考えると長期休暇をとることに抵抗がある男性は多いのではないでしょうか。
男性の育児休業にはさまざまなメリットがあるので、取得をあきらめる前に、育児休業の仕組みを理解することが大切です。
今回は男性の育児休業の現状やメリット、不当な扱いを受けたときの対処法などについて解説します。
1.日本における男性の育児休業の現状
厚生労働省の資料によると、女性の育児休業取得率は80%超で推移していますが、男性は6%程度にとどまっています。
しかし、男性の育児休業取得率は上昇傾向にあり、直近では大きく延びています。

引用:厚生労働省「男性の育児休業の取得状況と取得促進のための取組についてP2」(https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/meeting/consortium/04/pdf/houkoku-2.pdf)
日本では少子高齢化が進んでおり、このままでは年金や医療などの社会保障制度が立ち行かなくなる危機的な状況にあります。
若い世代が安心して子育てに取り組める環境を整えるには、男性の育児休業は欠かせません。
2015年(平成27年)に閣議決定された「日本再興戦略2015」では、2020年に男性の育児休業取得率を13%にする目標が掲げられています。*1
2.育児休業とは
育児休業とは、原則として1歳未満(一定の場合は2歳まで)の子どもを養育するために休業できる制度です。
育児・介護休業法で定められた制度で、会社に申し出ると育児休業を取得できます。
正社員だけでなく、
「同一の事業主に引き続き1年以上雇用されている」
などの条件を満たす場合は有期契約労働者(パート、派遣社員、契約社員)も取得可能です。
育児休業中は、雇用保険から育児休業給付が支払われます。
支給額は、育児休業開始から6か月までは休業開始前賃金の67%相当額、それ以降は50%相当額です。
さらに、育児休業中は社会保険料(健康保険、厚生年金保険、国民年金)の免除も受けられます。*2
このように、育児休業には経済的支援が用意されているので、生活費を心配することなく子育てに参加できます。
3.男性の育児休業取得を促進するための制度
男性の育児休業取得を促進するため、「パパ・ママ育休プラス」「パパ休暇」という2つの制度が用意されています。
①パパ・ママ育休プラス
パパ・ママ育休プラスとは、両親がともに育児休業を取得する場合、原則子どもの年齢が1歳までの育児休業が1歳2か月までに延長される制度です。
延長される2か月分は、夫または妻の育児休業にプラスされます。
パパ・ママ育休プラスの適用要件は以下3つです。*3
- 子どもが1歳に達するまでに配偶者が育児休業を取得している
- 本人の育児休業開始予定日が子の1歳の誕生日以前であること
- 本人の育児休業開始予定日は配偶者の育児休業の初日以降であること
夫婦で取得すれば、妻だけよりも長く育児休業を取得できます。
また、「夫と妻で6か月ずつ育児休業を取得する」といったことも可能です。
②パパ休暇
パパ休暇とは、父親が子どもの出生後8週間以内に育児休業を取得した場合、原則1回の育児休業を再度取得できる制度です。
パパ休暇の適用要件は以下2つです。*4
- 子の出生後8週間以内に育児休業を取得していること
- 子の出生後8週間以内に育児休業を終了していること
たとえば、1回目の育児休業では出産直後の妻をサポート、再度取得する際は妻の職場復帰をサポートするといった目的でパパ休暇を活用できます。
4.男性が育児休業を取得するメリット
男性が育児休業を取得すれば、子育てに参加できるのはもちろん、以下のようなメリットもあります。
①妻の体調やキャリア形成をサポートできる
妊娠・出産を経験した女性には、心身ともにかなりの負担がかかっています。
しかし、子どもが産まれれば子育ては待ったなしです。
特に第1子の場合は、わからないことばかりで不安になることも多いでしょう。
男性も育児休業を取得すれば、夫婦で協力しながら子育てができ、妻の体調面についてもサポートできます。
また、妻が職場復帰するタイミングで育児休業を取得することで、妻のキャリア形成を支援できます。
育児休業後の育児分担のあり方について、夫婦で話し合う時間を持つことも可能です。
②勤務先で育休取得のロールモデルになれる
勤務先で育児休業を取得したことがある男性社員は、まだ少ないのではないでしょうか。そのような状況で育児休業を取得すれば、勤務先で育休取得のロールモデルになれます。
男性の育児参加に対する理解が深まり、業務の効率化や長時間労働の抑制につながるなど、勤務先によい影響を与えられるかもしれません。
育児休業で一時的に仕事から離れることにはなりますが、長期的にはキャリア形成にプラスの効果が期待できます。
③仕事のやり方を見直すきっかけになる
育児休業を取得する際は、仕事の棚卸しを行い、他の社員に業務を引き継いでもらう必要があります。
また、育休取得後も育児・家事をするには、効率よく仕事をこなして早く帰宅しなくてはなりません。
育児休業の取得は、これまでの仕事のやり方を見直し、効率的な働き方を身につけるきっかけになります。
5.男性が育児休業を取得する際の注意点
男性が育児休業を取得する際の注意点は以下3つです。
・育児休業を取得した男性社員の話を聞く
・会社や上司に早めに相談する
・休業中も定期的に会社と連絡を取る
社内で育児休業を取得した男性社員がいる場合は、取得してどうだったか聞いてみましょう。
社内でいなければ、社外の人でも構いません。
よかったことだけでなく「失敗したこと」「やっておけばよかったこと」を教えてもらえると、自分が取得するときの参考になります。
自分の仕事を問題なく引き継げるように、会社や上司に早めに相談しておくことも大切です。
また、育児休業中も、メールや電話で定期的に会社と連絡を取るようにしましょう。
家庭での様子を報告すれば上司は安心できますし、休業中の会社の状況もわかるので、スムーズに職場復帰できます。
6.育児休業取得で不当な扱いを受けたときの対処法
男性が育児休業を取得する場合、勤務先で不当な扱いを受けないか気になるのではないでしょうか。
育児休業の取得は労働者の権利であるため、基本的に会社は取得を拒否・制限できません。
また、育児・介護休業法では、育児休業を理由に解雇や不当な扱いをすることを禁止しています。
もし育児休業の取得で不当な扱いを受けるようなことがあれば、まずは人事部など社内の担当部署に相談するといいでしょう。
社内で相談するのが難しい場合は、都道府県の労働局に相談することも可能です。*5
7.男性も育児休業を取得して子育てに積極的に参加しよう!
男性の育児休業には「パパ・ママ育休プラス」「パパ休暇」といった制度が用意されており、通常より長く育児休業を取得できるメリットがあります。
また、育児休業の取得は仕事のやり方を見直すきっかけになり、長期的にはキャリア形成にプラスの効果が期待できます。
男性も育児休業を取得して、子育てに積極的に参加しましょう。

金融ライター(AFP、2級FP技能士)
フリーランスの金融ライター。会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て、2017年10月より現職。10年以上の投資経験とFP資格を活かし、複数のメディアで執筆しています。
http://ikumen-project.mhlw.go.jp/employee/concept/
*2参考:厚生労働省「育児休業や介護休業 をする方を経済的に支援しますP3‐4」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/pdf/ikuji_h28_11_02.pdf
*3 *4参考:厚生労働省「両親で育児休業を取得しましょう!」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000169713.pdf
*5参考:イクメンプロジェクト(厚生労働省)「育児休業等についてよくある質問」
http://ikumen-project.mhlw.go.jp/employee/faq/