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会社からの退職勧奨「退職理由は自己都合の方が有利」は本当か?

 

新型コロナウィルスに端を発した急速な経済活動の停滞・景気後退により、これから大幅な人員整理が各社で進むことが予想されます。

人員整理の際は多くの場合、企業は社員に退職勧奨・希望退職制度を持ち掛けることになります。

退職勧奨(退職勧告)とは、会社が従業員に退職を持ちかけることです。

 

理由なき解雇は違法に当たるため、様々な言い訳で当該の従業員に退職を促すのです。

 

特に不況の中ではリストラをしたいということもあるでしょうし、何か不満があって退職させたい、と会社が考えているとします。しかし一方的な解雇をする理由がないので、本人が自ら退職するように誘導するというのが退職勧奨ですが、会社が誘導しておきながら退職理由を「自己都合」とさせるケースが相次いでいます。

 

しかし、言われるがままではいけません。様々な不利益が生じます。

 

 

 

1.退職勧奨にありがちなパターン

 

 

退職勧奨にありがちなパターンとして、上司に呼び出され個別面談で退職を勧められるというものです。そして回答期限を設定され、考えるように促されます。

承諾してしまうと、話は一気に進み、退職届を出すように言われてしまいます。

 

「流石にそれは酷いのではないか」。他人の話としてはそう捉えることができるのですが、いざ自分がそうなると、密室で上司からものを言われるという環境になるとどうでしょうか。

しかも、その場で退職金の話をちらつかせるということもあります。

 

冷静に物事を捉えるのが難しくなってしまいます。極度に落ち込んで言われるがままになってしまうかもしれませんし、逆に感情的になって短絡的に「辞めてやる!」となってしまうかもしれません。

また、「退職金を高めにするから」という話を持ちかけられると、「そのほうが良いかもしれないな」などと考えてしまうかもしれません。

 

すると、その後の手続きについて全てを諦めてしまったり、投げやりになってしまいがちです。しかしここで冷静に様々なことを考える必要があります。

 

 

 

2.断る権利と、「自己都合」「会社都合」の違い

 

 

まず前提として、こうした退職勧奨は「断る」ことが可能です。

もちろん会社のお金を着服したなどの行為や就業規則上の懲戒免職規定があれば話は別ですが、正当かつ客観的な理由がないまま退職を一方的に勧められても、拒否することができるのは当然です。

 

密室で持ちかけられてもすぐに返事をせず、まず一呼吸おきましょう。

感情的にならず、まずは持ち帰り、冷静に考えましょう。

 

そして、退職を決意した場合でも、退職理由の「自己都合」「会社都合」については考えなければなりません。

退職勧奨の場合、最終的には自分で決めたのだから自己都合、ではありません。

 

 

 

3.「自己都合」と「会社都合」の退職後の違い

 

そして、「自己都合」と「会社都合」の違いがいくつかあります。

まず、退職後に受け取ることのできる失業給付金の内容です。

 

自己都合での失業手当の給付日数はこのようになります。

「離職されたみなさまへ」ハローワーク

引用:「離職されたみなさまへ」ハローワーク

 

雇用保険の被保険者であった時期によりますが、最大で150日です。

 

一方、退職勧奨での退職は会社都合にあたり、「特定受給資格者」となります。この場合の給付日数は下の通りです

 

特定受給資格者一部の特定理由離職者

引用:「離職されたみなさまへ」ハローワーク

 

自己都合退職の場合より全体的に長く設定されています。最大で330日です。

 

支給開始日にも違いがあります。

・自己都合の場合:離職表の提出、ハローワークへの休職申し込み後に7日間プラス3か月の「給付制限」があります。どんなに早くても支給まで3か月と7日待たなければなりません。

・会社都合の場合:7日後から支給されます。

 

また、国民健康保険料の支払いが、会社都合の場合は軽減されますが、自己都合の場合は求職中であっても通常通り支払う必要があります。

 

なお、1日あたりの支給額は、下の計算式を参考にしてください。

支給額計算式

引用:「離職されたみなさまへ」ハローワーク

 

次に「自己都合」と「会社都合」で違うのは、転職・再就職時に提出する履歴書の内容です。

この点を指して「自己都合にした方が転職に有利」という退職勧奨をしてくる会社もあります。しかし鵜呑みにしてはいけません。

 

自己都合での退職であれば、履歴書には退職理由として「一身上の都合」と一言書けばそれで済むのですが、会社都合の場合は「会社都合」と書かなければなりません。

この違いは、転職や再就職の際にどのような影響を与えるのでしょうか。

 

 

 

4.「会社都合」は転職に不利なのか

 

 

退職理由がどちらであるか、それぞれにメリット・デメリットがあるのは事実です。

面接者からすると確かに退職勧奨での退職となると、優秀な人には退職勧奨をしないのではないか、何か問題があったのではないか、と考えてしまうのはある程度仕方のないことです。

 

しかし、自己都合が必ずしも有利かというと、そうだともいえない部分があります。転職回数が多すぎたり、短期間で離職している場合には、長くとどまってくれないのではないかと考えてしまいます。

 

確かに会社都合となると、前職の退職理由をある程度詳細にたずねられます。しかしここで嘘をつくのは良くありません。正直に冷静に事実を伝えることが重要です。その正直さがプラス要因にはたらくこともあります。

 

また、採用側として知りたいのは「自分の会社で何をしてくれるか」ですから、これまでのスキル、なぜこの会社を選んだのか、この企業で何ができるかをしっかりアピールすることが大切です。

 

そして気をつけたいのは、前の会社を悪く言うことです。「〜してくれなかった」「こんなことをする酷い会社だった」ということを平気で言う人を採用したいとは思いません。

他にも、ネガティブな言葉は使わないようにしましょう。自主性を欠く話の羅列は悪印象です。

 

面接は、受け答えの態度で人間性を探るのがメインです。いかに前向きでいるかを見られます。

 

 

 

5.まとめ

 

 

もし退職勧奨を受けた場合、まず最初は断り、そこからの経緯を書面やメモなどで残しておきましょう。執拗な退職勧奨やパワハラ的なやり方、「応じなければ解雇する」といった言葉で退職に追い込まれた場合、それは退職の強要であり、逆に損害賠償を請求できる立場になります。

 

また、後になって「自己都合」と勝手に書き換えられないように、「会社が退職勧奨を出し、自分はそれに応じた」ということについて押印を伴う書面を作っておければベストです。

 

まず冷静になり、退職を決意した場合も、経緯や状況を客観的に説明できるまでに自分の中で消化する期間を置くのが良いでしょう。その時点で落ち込むのは当然のことですが、焦りや悲観、落ち込みをそのまま面接に持ち込んでしまうと採用する側としては不安になります。

 

冷却期間を置き、気持ちを切り替えるためにも、会社都合として失業給付を長く受けられるようにするのは選択肢の一つです。

 

また、退職金や残りの有給については、就業規則を読み返すなどしてきちんと会社側と話し合いましょう。特に退職金に関しては、通常より多めに要求するのも良いでしょう。

必要に応じて、弁護士に相談することもお勧めします。

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