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借入金が多いほど実は優良企業?新型コロナによる大型融資案件についても詳しく解説!

借入金が多いほど実は優良企業?新型コロナによる大型融資案件についても詳しく解説!

新型コロナによる景気低迷の以前から、巨額の借入金を調達して事業を行っている企業はたくさんあります。

 

これらの企業は売上高は巨額ですが、借入金額も何兆、何千億円など桁違いに多いのが特徴です。

 

今回は借入金が多い大企業について、手元資金のマイナス金額や売上高、当期利益などを包括して詳しく解説をしていきます。

 

企業が借入する際のメリットやデメリット、最新の大型融資事案までご紹介していきますので、ぜひ、最後までご覧ください。

 

1.手元資金より借入金の方が多い大企業TOP10ランキング

 

ネットキャッシュ(現預金+短期保有有価証券-有利子負債-前受金)のマイナスが多い企業をまとめた表がこちらになります。(下図1)

 

順位 企業名 ネットキャッシュ 売上高(20年3月) 当期利益(親会社)
1位 ソフトバンク △11兆8265億円 6兆1850億円*1 △9615億円*1
2位 武田薬品工業 △5兆488億円 3兆2911億円*2 442億円*2
3位 東京電力ホールディングス △4兆8901億円 6兆2414億円*3 507億円*3
4位 東海旅客鉄道 △4兆2062億円 1兆8446億円*4 3978億円*4
5位 三井物産 △3兆8708億円 6兆8850億円*5 3915億円*5
6位 三菱商事 △3兆7592億円 14兆7797億円*6 5353億円*6
7位 関西電力 △3兆6728億円 3兆1842億円*7 1300億円*7
8位 日本電信電話 △3兆3165億円 11兆8994億円*8 8553億円*8
9位 住友不動産 △3兆1705億円 1兆135億円*9 1409億円*9
10位 東日本旅客鉄道 △3兆107億円 2兆9466億円*10 1984億円*10

図1)東洋経済オンライン「最新版 借金が多い企業ランキング TOP500社を参考に執筆者作成(https://toyokeizai.net/articles/-/317491?page=2)

 

①手元資金より借入金が多いナンバーワンはソフトバンクの11兆円

東洋経済オンラインの記事によると、借入金の多い企業ナンバーワンは5年連続でソフトバンクになりました。

 

2019年度の決算では6兆1850億円と巨額の売上高を計上していますが、親会社に帰属する当期利益はマイナス9615億円であり、ランキングされた10社の中でもダントツのマイナス利益となっています。

 

ソフトバンクが巨額の債務を抱えている背景には、2013年にアメリカの携帯会社のスプリントや、2016年にイギリスの半導体設計大手のアーム・ホールディングスを買収したことが主な原因です。

 

2位は武田薬品工業ですが、2020年5月13日に、ネットキャッシュのマイナス要因であったシャイアーの買収・統合費用が大幅に減少することから、2021年3月期の連結営業利益予想(国際会計基準、IFRS)が前年比3.5倍の3550億円になることを発表しています。(2020年5月13日 ロイター)

 

3位には東日本大震災の原発事故で賠償責任を負った東京電力がランクイン。現在も莫大な損害賠償費を負担していますが、2019年度の決算では6兆2414億円という巨額の売上高を計上しており、親会社に帰属する当期利益も507億円と黒字決算になっています。

 

②業種はインフラ事業が多い

TOP10にランキングされた企業の業種を見てみますと、電力事業(3位:東京電力、7位:関西電力)に鉄道事業(4位:東海旅客鉄道、10位:東日本旅客鉄道)、通信事業(8位:

日本電信電話)などのインフラ事業が半分を占めています。

 

電気やガスをはじめ、通信、水道、交通などインフラ事業は国民生活になくてはならない基盤事業でありますが、高度経済成⾧期に建設した大量の設備の更新が控えていることから、費用は今後増大していくことが見込まれている状況です。

 

2.企業が借り入れをするメリットとデメリット

 

企業が借り入れをするには、様々な理由があります。

資金調達を行う理由として一番多いのは、新規事業の立ち上げや他企業を買収するときです。ソフトバンクや武田薬品工業などのケースが該当します。

 

ここでは、企業が借り入れをする際のメリットやデメリットについて解説をしていきましょう。

 

①借り入れをするメリット

借り入れをすることにより得られる大きなメリットは、企業を成長させるための投資ができることです。

 

新規事業を立ち上げる際には土地や建物、機械などに多額の設備投資をしなければなりません。企業買収の際にも多額の買収費用が必要となります。

 

また、新型コロナや自然災害など、予期せぬ災害などにより運転資金が急に必要になった場合にも、資金調達をすることで経営の安定ができるでしょう。

 

資金繰りを安定させることで倒産のリスクを抑えられます。

 

②デメリット

借り入れをした場合の大きなデメリットは、返済で経営が圧迫される懸念があることです。

 

設備投資をすれば効率が上がり、利益率も上がる場合がありますが、設備資金が高額なため、回収するまでには時間がかかることもあり得ます。

 

また、上手く行くと思われた事業が、思わぬ事態により見込み外れになることも考えられるでしょう。

 

銀行から借り入れをする場合には、調達するまでのプロセスに時間を要することもあり、金利の負担が発生するというデメリットもあります。

 

返済を滞納すると信用情報に傷が付くのも大きなデメリットです。

 

3.新型コロナによる大企業の大型資金調達【2020年】

 

新型コロナによる感染拡大の影響で、世界経済は混沌とした状況に追い込まれるようになりました。

 

日本経済も深刻なダメージを受けており、これまで順調だった企業の業績が一気に大幅な赤字に転落する結果にもなっています。

 

2020年前半期で、特に目立った大企業の巨額資金調達はこちらです。

 

①日産自動車は7126億円の資金調達

日産自動車は2020年5月28日に、新型コロナ感染拡大の影響で生産拠点が一時停止する状況の中で、4~5月にかけて7126億円を追加で調達したと発表しました。

 

同社は2020年3月期の連結当期損益が6712億円の赤字に転落しており、新型コロナの影響で新車の需要が低迷している中、市場では運転資金などが不安視されていましたが、当面、十分な資金は確保できているとしています。*11

 

②トヨタ自動車は総額1兆円規模の資金調達を設定

トヨタ自動車は、三井住友銀行と三菱UFJ銀行に対して、総額1兆円規模の融資枠の設定を要請したことが2020年3月27日に明らかになりました。

 

トヨタは強固な財務基盤を維持していますが、新型コロナの世界的な感染拡大で先が見えない事業環境に備えるのが目的です。

 

新型コロナは現在においても世界中で新たな感染を引き起こしており、トヨタは新車市場の減益を見込んだうえで、欧米などの工場を相次いで休止しています。

国内でも4月3日から5つの工場で7つの生産ラインを一時停止している状況です。*12

 

③ANAホールディングスは9500億円の融資

ANAホールディングスは2020年5月28日、日本政策投資銀行から3500億円を借り入れること発表しました。

 

すでに決定している金融機関との融資枠の増額と合わせると、合計で9500億円規模となっています。

新型コロナによる旅客収入激減に対する運転資金面を調達するのが目的です。

 

ANAは大幅な減便が大きく響き、2020年1~3月期の連結最終損益は600億円弱の赤字となっており、今後もさらに悪化することが見込まれている状況です。

 

売上高の減益が長期化することの対策として資金を確保しています。*13

 

4.まとめ

 

今回は、借り入れの多い企業について詳しく解説をしていきました。

借り入れは新規事業を立ち上げるなど企業が成長するためには、欠かせないものであるともいわれています。

 

また、新型コロナによる感染拡大が原因で、企業を取り巻く状況は非常に厳しくなりました。そのような災難に立ち向かうためにも、企業は資金調達を確保して事業を存続させていくのです。

 

全く可能性がない企業には金融機関は融資をしません。

 

借り入れをしながら成長を目指す企業は多く、また、社会的に必要とされる企業であるからこそ資金調達が可能であるということが言えるでしょう。

 

参考資料/WEBサイト
*1 参考)ソフトバンク「有価証券報告書2020年3月決算」P3
https://group.softbank/system/files/securities_report_q4fy2019_01_ja.pdf?file=pdf/ir/financials/security_reports/securities_report_q4fy2019_01_ja.pdf
*2 参考)武田薬品工業「有価証券報告書2020年3月決算」P2
https://www.takeda.com/4a78f9/siteassets/jp/home/investors/report/consolidated-financial-statements/asr143_jp.pdf
*3 参考)東京電力「有価証券報告書2020年3月決算」P1
https://www.tepco.co.jp/about/ir/library/securities_report/pdf/202006-j.pdf
*4 参考)東海旅客鉄道「有価証券報告書2020年3月決算」P3
https://company.jr-central.co.jp/ir/financial-statements/detail/_pdf/000040560.pdf
*5 参考)三井物産「有価証券報告書2020年3月決算」P1
https://www.mitsui.com/jp/ja/ir/library/securities/__icsFiles/afieldfile/2020/06/19/ja_101yuho.pdf
*6 参考)三菱商事「有価証券報告書2020年3月決算」P1
https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/ir/library/fstatement/pdf/2019_04/y2019_04.pdf
*7 参考)関西電力「有価証券報告書2020年3月決算」P2
https://www.kepco.co.jp/ir/brief/securities/96/pdf/all.pdf
*8 参考)日本電信電話「有価証券報告書2020年3月決算」P1
https://www.ntt.co.jp/ir/library/yuho/pdf/35yuho.pdf
*9 参考)住友不動産「有価証券報告書2020年3月決算」P2
http://www.sumitomo-rd.co.jp/uploads/8830_FY2020_report.pdf
*10 参考)東日本旅客鉄道「有価証券報告書2020年3月決算」P2
https://www.jreast.co.jp/investor/securitiesreport/2020/pdf/securitiesreport.pdf
*11 ニューズウィーク日本版「日産、4月以降に8326億円を調達済み 西川氏には4億円支給=有報」
https://www.newsweekjapan.jp/headlines/business/2020/07/283301.php
*12 日本経済新聞「トヨタ、1兆円の融資枠要請 新型コロナ長期化に備え」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57314840X20C20A3L91000/
*13 日本経済新聞「ANAHD、政投銀から3500億円借り入れ」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59697020Y0A520C2DTA000/
執筆者
名前:矢口ミカ
プロフィール:フリーランスの転職・不動産ライター。複数のメディアで執筆中です。宅建の資格を活かし、家族が所有する投資用不動産の入居者管理もしています。趣味は整理収納と料理。
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