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新型コロナウイルスでの減給や休業手当はどうなる?

「給与明細を見ると、なぜか減給されていた…。」

労働者の中には、そんなトラブルを経験する方も少なくありません。

 

しかし給料というのはそう簡単に下げて良いものではありません。特に、同意なき減給は様々な法律に反する行為ですので決して泣き寝入りしてはいけません。

 

また今年に入り、新型コロナウイルスの影響で営業自粛や事業の縮小を強いられる企業が増えています。その場合の賃金の扱いなどについても紹介します。

 

1.賃金変更には労使間の同意が必要

 

能力不足だから、会社の経営状態が悪いからなどという言い分が会社側にあったとしても、賃金の変更には「労使間の同意」が必要であることが法律で定められています。

 

労働契約法では、

第八条 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。

第九条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。

引用:e-Gov「労働契約法」 (elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=419AC0000000128)

 

とされています。

 

中でも賃金は労働契約の重要な要素です。労使が同意してその条件を変更することはできても、賃金の引き下げという労働者に不利益な条件に勝手に変更することはできない、というものです。

 

就業規則を変更することで減給したとしても、労働者の不利益になるような就業規則の変更そのものが労使間の同意を必要とします。

「就業規則が変わったから」と一方的に持ち出されても、それは違法行為に当たります。

 

また、パートタイム労働者についても、不合理な労働条件は禁止されています(パートタイム労働法第八条)。パートタイムだからといって不合理に減給することは不可能です。

実際に裁判に持ち込まれた時は、これらの法律をもとにした判例が示されています。

 

モデル裁判例 コナミデジタルエンタテインメント事件

(独立行政法人 労働政策研究・研修機構より)(www.jil.go.jp/hanrei/conts/05/28.html)

 

しかし、例外もあります。就業規則の範囲内での減給です。

ただ、多くは制裁や懲戒といった従業員に就業規則上の非があると認められた場合や、もともと就業規則にある計算式に従った人事考査結果の反映といったケースです。

 

ただ気をつけておきたいのは、この場合でも限度額があるという点です。就業規定に減給処分が定められている場合でも、「一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない」(労働基準法第91条)とされています。

 

2.経営悪化がより深刻な場合

 

さて今年に入り、新型コロナウイルスが多くの企業の経営状態を悪化させています。死活問題となっている企業も少なくありません。

 

ほとんど営業が成り立っていないような状況に置かれると、従業員としても「少しくらい給料が減っても仕方ないかな」と思ってしまうかもしれませんが、この場合も労使間の同意が前提です。

 

ただ新型コロナウイルスの影響は、今後も経済に打撃を与えることがほぼ確実視されています。

そして、会社の存続じたいが危ぶまれるほどの状況に陥った時は、労働者の反対があっても会社が就業規則を変更することができるという規定があります。ポイントは「労働者が受ける不利益の程度」です。

 

この場合「労働者が受ける不利益の程度」のレベルは「給与ダウンか失職のどちらが不利益か」ということになります。

 

どちらが良いかは個人によって違うでしょう。しかし、失職の方が労働者の不利益が大きいと解釈されれば、法的には認められます。

もちろん労使間の同意という基本に照らして、就業規則の変更内容について交渉はしなければなりません。ただ、減給か失職かという話になると、交渉が決裂してもやむなしという判断もありえます。

裁判では、経営状態と減給の形や金額、交渉の経過を総合して合理性が判断されます。

 

3.新型コロナウイルスに感染や感染疑いとなった時

 

今回、自分が新型コロナウイルスに感染してしまった、あるいは感染の疑いがある、といった場合の休業については、厚生労働省がその対応を説明しています(令和2年2月21日時点)。

 

ポイントは「休業が会社側の都合かどうか」というところです。

 

「使用者の帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中老害労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」(労働基準法第26条」となっており、これが前提になっています。

 

まず、感染したために会社を休む場合です。この場合、都道府県知事が行う就業制限で休業する場合は「使用者の責に帰すべき自由による休業に該当しない」つまり、会社の都合で勝手に休ませているのではないため、会社としては休業手当を支払う義務はありません。

 

ただ、会社などの健康保険に加入している場合は、保険者から傷病手当金が支払われます。休業せざるを得なくなった日から3日を経過した日から、給料の一定割合(標準報酬日額の3分の2)が支給されますので、無理に出勤しないでください。

 

次に「感染の疑い」がある場合です。

「風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く場合、強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)*1」がある場合は、まず保健所などの「帰国者・接触者相談センター」に問い合わせます。

「帰国者・接触者相談センター」では症状の詳細についての相談や医療機関の紹介を行っています。その結果を踏まえても職務の継続が可能とされた場合、休ませるかどうかは会社側の判断とされます。会社側から休むよう指示された場合は会社側の都合ということになり、会社には休業手当を支払う義務が生じます。

 

各センターごとに相談の目安や相談先が記載されていますので、下記のホームページをご覧ください。

 

※全国の「帰国者・接触者相談センター」:(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19-kikokusyasessyokusya.html)

なお発熱などの症状で自主的に休む場合は、通常の病気欠勤と同じ扱いになります。

この場合、有給休暇扱いにするよう会社が強制することはできません。

 

4.まとめ

 

感染した疑いがあるまま出勤し、勤務先で感染拡大が起きたり勤務先が一時休業などの措置を講じる例が相次いでいます。

このウイルスの特徴として感染経路が見えない、ということが言われますが、無症状の人を何人も介して感染し、何人めかの人だけに症状が現れるといった性質も指摘されています。

 

感染や疑いがある場合の厚生労働省の基本解釈は上に紹介した通りですが、「外部からの不可抗力」によって休業になったときは休業手当の支払い義務はない、という原則もあります。

特に今回はどんなことが起きるかわかりませんから、様々な場合について労使間で決まりごとを作っておくのが良いでしょう。

 

もちろん日頃の感染防止もそうですが、自分が無症状のうちに感染させる側になっているかもしれないということにも注意が必要です。

 

 

参照データ
*1 「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」厚生労働省
www.mhlw.go.jp/content/11302000/000598680.pdf p3~

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