看護師の職場というと、一番初めに病院を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
実際に一番多いのは病院ですが、看護師が活躍する場所は病院だけではありません。
クリニックや介護施設の他に、企業やイベントで働く選択肢もあります。
しかし、それぞれどのような特徴があるのか分からず、「興味はあるけど踏み出せない」と不安に思ってる方も多いでしょう。
そこで今回は、病院以外で働きたい方に向けて、看護師が活躍できる職場や特徴をまとめました。
その他にも、病院以外への転職で考えるべきポイントもまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
1.看護師の職場は年齢とともに多様化する
看護師というと病院をイメージするように、看護師の職場で一番多いのが病院です。
厚生労働省の調査によると、平成30年末現在、病院で働く看護師は全体の70.9%でした。*1
次に多いのが診療所で12.8%ですが、比較しても病院で働く看護師が圧倒的に多いことが分かります。*1
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参考)厚生労働省 「平成30年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」を参考に筆者作成(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/18/dl/gaikyo.pdf 3P)
しかし、年齢とともに看護師の職場は変化していきます。
以下のグラフは厚生労働省によるもので、看護師がどのような職場で働いているのか年齢別にまとめたものです。
このグラフを見ると、年齢が上がるにつれて病院以外で働く人が増えています。
25歳未満では病院で働く看護師が90%以上ですが、徐々に割合は低下し、65歳以上になると40%ほどになります。
その代わり、診療所や介護老人保健施設等の割合が増えています。
このことから、転職先に病院以外の職場を選ぶ人が多いことが分かります。

引用)厚生労働省 「看護職員の現状と推移」(https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000072895.pdf 6P)
では、なぜ年齢が上がるにつれて病院以外で働く人が増えるのでしょうか?
それには、以下の理由が考えられます。
・病院での経験が看護師の基礎になるため、新卒時は病院に就職する人が多い
・病院での経験を、他の職場で活かしたいと考える人が増える
・ライフスタイルの変化によって、病院で働くのが難しくなり他の職場に転職する
看護師の資格は年齢による制限がなく、取得すれば長く活躍できます。
また、病院以外のさまざまな場所で働けるのは、看護師のメリットといえます。
2.病院以外の場所で働く理由やメリットとは
看護師が転職を考える理由には、どのようなものがあるのでしょうか。
厚生労働省が行った調査によると、看護職員として就業している者のなかで、他施設で看護職員として働きたい理由は以下の通りでした。
1位:他施設への興味(34.1%)
2位:給与に不満があるため(31.1%)
3位:休暇がとれない・とりづらいため(24.5%)*2
この結果を見ると、ポジティブな理由もありますが、職場への不満を理由に転職を考えている看護師が多いことが分かります。
では、病院以外の場所で働く理由やメリットにはどのようなものがあるのか、深掘りしていきます。
①病院以外で働くことで、さまざまな経験ができる
同じ看護師の仕事でも、働く場所が違えば役割も異なります。
例えば、病院は治療が優先ですが、介護の分野では日常生活のケアが中心になります。
病院以外の職場で働くことで、看護師の幅を広げることができます。
②病院よりも緊迫感がない
病院には命の危機に直面している患者さんが多く、緊張感のある雰囲気のなか働きます。
この状態が続くと、いくら看護が好きでも心身共に疲れることも珍しくありません。
病院以外の職場では、慢性疾患のコントロールや健康管理などが多くなるので、ゆったりとした雰囲気で働けます。
③業務以外の拘束時間が少ない
病院で働く看護師の仕事は、患者さんの治療やケアだけではありません。
よりよい看護を追究するための看護研究や、業務内容を改善するための委員会など、通常の業務外での役割も多いです。
そうすると拘束時間が長くなり、プライベートの時間が十分に取れなくなります。
さらに、これらの時間には給与が発生しないことも多く、「労力のわりに給与が少ない」と感じる要因にもなっています。
病院以外の職場では、看護研究や委員会はほとんどなく、業務が終われば帰れることがほとんどです。
④日勤だけで働ける職場が多い
病棟勤務になると、夜勤は避けられません。
一方で、クリニックやデイサービスなど、日勤だけで働ける職場が多くあります。
病院以外の職場を選ぶことで、家庭と両立したい、年齢とともに体力がなくなってきたなど、状況の変化に合わせて働けます。
3.病院以外で看護師の資格が活かせる職場とは
ここで、病院以外で活躍できる看護師の職場を紹介します。
なかには、意外な職場もあるかもしれません。
それぞれの職場の特徴や働き方などもまとめました。
①クリニック
内科や皮膚科、眼科など、さまざまな分野があります。
美容系のクリニックも人気です。
経験のある診療科だと有利ですが、未経験でも応募可能なところもあります。
また、往診をしているクリニックでは、医師とともに患者さんの自宅を訪問します。
②介護
介護の職場には、大きくわけて3つあります。
・施設系:特別養護老人ホーム、有料老人ホームなど
・在宅系:訪問看護、訪問入浴介護など
・通所系:デイサービス、デイケアなど
日勤のみの職場も多いですが、施設系では夜勤もあることがあります。
もしくは、オンコール(患者さんの急変時に備えて待機すること)がある職場もあるので、転職するときは初めに確認すると安心です。
なかには「病棟経験3年以上」など、募集要項に規定されている場合もあります。
③企業
企業の健康管理室で、従業員の健康管理や相談業務を行います。
病院と異なり、医療業務はほとんどありません。
日勤のみ、土日休みなど、勤務形態は一般の社員と同じ場合が多くなっています。
④子ども・教育
主に以下の場所で、子どもたちに関わる仕事ができます。
・保育園
・学校(養護教諭※養護教諭免許が必要)
・看護師養成学校や看護大学の教員
保育園や学校では、子どもたちの健康管理や応急処置を行います。
また、教員として看護師を目指す学生の指導もできます。
⑤健診・献血
病院と違うのは、どちらも健康な人が対象であることです。
健診センターでは、問診や検査の介助を行います。
献血ルームは採血が中心で、献血前の血液検査や献血に使用する血液を採取します。
1日に何人もの人が訪れるので、正確に効率よく業務を行う必要があります。
⑥ツアーナース・イベントナース
修学旅行や企業の研修、イベント時に、参加者の健康管理や応急処置を行います。
泊りがけや土日の仕事も多くあります。
雇用形態は派遣がほとんどで、派遣会社に登録すると求人が多く出ています。
4.看護師が病院以外への転職を成功させるためのポイント
これまで紹介した通り、看護師には病院以外にも多くの職場があることが分かりました。
では、転職を成功させるためにはどうしたらよいのでしょうか。
①転職する目的を明確にする
転職を考えるとき、「もっとプライベートを大切にしたい」「別の分野で働きたい」など、動機があるはずです。
なぜ転職したいのか、転職してどのような働き方をしたいのか、目的を明確にしましょう。
②希望条件のうち、優先順位を考える
転職先に求める条件は、複数ある場合も多いです。
しかし、全ての条件が叶う職場はなかなかないかもしれません。
条件のなかでも「これだけは譲れない」というものを決めて、優先順位を考えましょう。
③それぞれの職場の特徴を調べたうえで転職先を決める
看護師の職場は、多種多様です。
それぞれに特徴があるので、よく調べたうえで転職先を決めましょう。
例えば、健診センターは夜勤がなく、健康な人が対象なので、病院と比べると楽に働けると思われがちです。
しかし、業務の正確性やホスピタリティなど、病院とは違ったものが求められます。
自分のやりたい看護業務ができるのか、慎重に判断しましょう。
④職場だけでなく、雇用形態も併せて考える
仕事量の多さを理由に転職を考えている場合は、雇用形態も併せて考えることをおすすめします。
正社員よりも、アルバイトや派遣の方が業務量を減らせます。
給与との兼ね合いもあると思いますが、雇用形態を変えて仕事量を減らすのもひとつの方法です。
5.まとめ
看護師の職場は、病院以外にもさまざまあります。
それぞれの特徴を把握し、自分自身の希望と合うか見極めたうえで転職先を決めましょう。
また、転職する目的と優先順位を決めたうえで、転職先を決めることが大切です。
せっかく取得した看護師資格ですので、やりがいを持って長く働けるように転職先を考えてみてください。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/18/dl/gaikyo.pdf 3P
*2 参考)厚生労働省 「看護職員就業状況等実態調査結果」
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000017cjh-att/2r98520000017cnt.pdf 14P

プロフィール:フリーライター。看護師として病院や介護の現場で勤務後、子育てをきっかけにライターに転身。看護師の経験を活かし、主に医療や介護の分野において根拠に基づいた分かりやすい記事を執筆。