働くコラム 独立を考える

副業じゃなく「起業」と言う選択肢も 職業「主婦」兼「社長」です!

 

 

近年、女性の起業を支援する政策が盛んになっています。家事や育児を経験した主婦ならではの視点も期待され、創業のための経営ノウハウを学ぶ講座等、起業を考えている女性に対する国のサポートも増えてきました。

今回は、そんな女性の起業を後押しする、役立つ情報や具体的な事例を見てみましょう。

 

1.女性の起業 現状

 

2017年の総務省の「就業構造基本調査」をみると、女性の起業者は922000人と全体の2割程度にとどまりましたが、2012年の前回調査よりも数・割合ともに増加しています*1

女性の就業率は出産・育児の時期に低下する傾向にあるものの、育児の一段落した女性においては、家事・育児等の自己の経験を活用できる事業分野で、新たな活躍の場を求めて起業に踏み切っている現状が見られます*2

起業を意識したきっかけとして「結婚や出産によって家庭環境が変化した」「介護や子育て等が一段落し時間的に余裕ができた」といった家庭の状況に関する要因を挙げる女性が多い*3一方で、不安に挙げられるのが費用面や経営知識の乏しさです。

中小企業庁の調査*4によると、起業を将来の選択肢として認識しつつ、現時点では準備していない「潜在的起業希望者」は、男女を通して40万人以上にのぼると推計されており、中でも職務経験の少ない主婦等による起業を成功させるには、資金繰りだけではなく経験不足を補う支援が必要と考えられています。

そこで、政府が取り組んできたのが、起業に関する知識を身に付けられる「創業スクール」です。2014年度から経済産業省の事業として始まり、女性起業家コースも設置されました。現在は民間の創業スクールを国が認定するという形式に変わりましたが、認定は下記の一般基準のほか、過去の実績や地域との連携、多様な受講者への設備等の追加基準も加味して行われており、悪徳セミナーを防ぐ狙いもあります。

 

中小企業庁「平成30年度潜在的創業者掘り起こし事業 公募要領」

引用)中小企業庁「平成30年度潜在的創業者掘り起こし事業 公募要領」(https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/chiiki/2018/180221sogyoshien1.pdf)

 

 

2.「起業したい」をサポート 支援ネットワーク構築事業

 

従来の起業支援では起業準備以降に重点が置かれていることから、政府としては女性固有の起業課題である「起業を決意・準備し始める前の段階」、つまり下記の表におけるフェーズ0及び1の段階におけるサポートを進める考えです。

 

経済産業省「平成30年度女性起業家等支援ネットワーク構築事業 活動報告書」P3

引用)経済産業省「平成30年度女性起業家等支援ネットワーク構築事業 活動報告書」P3(https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/joseikigyouka/pdf/30houkokusyo.pdf)

 

また、経済産業省では、「何かできることから始めてみたい」 「起業に向けて準備していきたい」といった女性の声を受け、起業における不安に寄り添って課題を一緒に解決できるよう、女性起業家等支援ネットワーク構築事業に力を入れています。

 

経済産業省「平成30年度女性起業家等支援ネットワーク構築事業 活動報告書」P5

引用)経済産業省「平成30年度女性起業家等支援ネットワーク構築事業 活動報告書」P5(https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/joseikigyouka/pdf/30houkokusyo.pdf)

 

さらに、補助事業として「わたしの起業応援net」というウェブサイトも運営されているため、下記の項目に当てはまる女性は一度、目を通してみると良いでしょう。

 

・子育てや介護や家事と両立しながら、自分の働ける時間で働きたい。
・自分の好きなこと、得意なことを仕事にしたい!
・こういうサービス・商品があったらいいのにと考えているアイデアを形にして、同じように必要としている方のために役に立ちたい。
・起業にむけた準備を一緒に進めてくれる仲間・サポーターに出会いたい。
・少しずつこれからの働き方を見直していきたい。
・ボランティアで行っている今の活動を事業化したい。

引用)経済産業省 令和元年度 女性起業家等支援ネットワーク構築補助金事業の補助事業「わたしの起業応援net」(https://www.joseikigyo.go.jp/beginner/)

 

1人で悩まず、つながりを持つことが大切として、女性起業家等支援ネットワークは全国10ヵ所に設置され、自分の身近なところで相談相手や仲間を探したり、勉強会に参加したりできるようになっています。

 

経済産業省 令和元年度 女性起業家等支援ネットワーク構築補助金事業の補助事業「わたしの起業応援net」

引用)経済産業省 令和元年度 女性起業家等支援ネットワーク構築補助金事業の補助事業「わたしの起業応援net」
ネットワーク(https://www.joseikigyo.go.jp/network/)

 

全国のネットワーク組織が参加して支援した事例を紹介し合う女性起業家支援コンテストも定期的に開催されています。

多様な支援ノウハウを共有し横展開を行って、「女性起業家特有の課題や支援ニーズに対応できる広域的な支援連携体制の強化*5」を目指すほか、起業という働き方も選択肢であると周知し、この支援ネットワークの 活用促進を図っています。

 

3.主婦の起業事例 地域の機関にも相談を 

 

起業に際しては、地域の金融機関や自治体などがサポートしている例も多く見られ、特に、子育ての支援や地域活性化につながる場合、助成金の相談等にも積極的な傾向があります。商工会からサポートを受けられるケースもあります。以下に具体的な事例を見てみましょう。

 

大阪府でのケース

日本政策金融公庫「先輩創業者の創業事例」より抜粋し要約

参考)日本政策金融公庫「先輩創業者の創業事例」より抜粋し要約(https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/case/mamatorie/)

 

広島県でのケース

経済産業省 令和元年度 女性起業家等支援ネットワーク構築補助金事業の補助事業「わたしの起業応援net」先輩女性起業家インタビューより抜粋し要約

参考)経済産業省 令和元年度 女性起業家等支援ネットワーク構築補助金事業の補助事業「わたしの起業応援net」先輩女性起業家インタビューより抜粋し要約(https://www.joseikigyo.go.jp/interview/811/)

 

福島県でのケース

経済産業省 令和元年度 女性起業家等支援ネットワーク構築補助金事業の補助事業「わたしの起業応援net」先輩女性起業家インタビューより抜粋し要約2

参考)経済産業省 令和元年度 女性起業家等支援ネットワーク構築補助金事業の補助事業「わたしの起業応援net」先輩女性起業家インタビューより抜粋し要約(https://www.joseikigyo.go.jp/interview/851/)

 

4.資金面の不安を軽減 プチ起業という選択肢も

 

起業に際しては、その費用に不安を感じる人も多くいることでしょう。特に、信用力が低く評価されがちな女性は資金調達において困難に直面しやすく、政策金融による支援が不可欠です。そこで経済産業省では、女性や若者(35歳未満)、シニア(55歳以上)を対象に、新規開業して概ね7年以内を基準とし、日本政策金融公庫の低利融資制度「女性、若者/シニア起業家支援資金」を設けています。

 

女性、若者/シニア起業家支援資金【日本政策金融公庫】

首相官邸「地域の『稼ぐ力』や『地域価値』を高めるまちづくり関連施策」P6の項目8

引用)首相官邸「地域の『稼ぐ力』や『地域価値』を高めるまちづくり関連施策」P6の項目8(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/seisaku_package/siryou2019/siryou4-2.pdf)より下記サイトへ(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/seisaku_package/siryou2019/siryou4-2/8-8.pdf)

 

さらに、創業2期未満の人が無担保・無保証人で利用できる新創業融資制度では、拡充措置として女性に対する小口創業支援の特例もあり、300万円までの貸付について対象要件が撤廃されます。

経済産業省経済産業政策局 経済社会政策室「経済産業省の女性活躍推進に向けた起業支援の取組」P8

引用)経済産業省経済産業政策局 経済社会政策室「経済産業省の女性活躍推進に向けた起業支援の取組」P8(http://www.gender.go.jp/kaigi/renkei/team/kigyo/pdf/h28_0121_kigyo01_3.pdf)

 

民間の金融機関では、貸付リスクの大きい相手への融資は難しいと判断されがちですが、日本政策金融公庫では、国の政策として積極的に新規事業の支援を行っており、過去の実績がなくても起業時に融資を受けやすいのが特徴です。

また、専業主婦など配偶者の稼ぎで生活できる場合、「趣味を仕事にする」「自分の夢を実現する」という点を重視して、費用面で無理をしない規模で、楽しみながら取り組む人もいます。

112時間、家族を学校や会社へと見送った直後の1時間と昼食後の1時間程度を使い、少しずつ個人事業主として始めてみるようなプチ起業であれば、資金もさほど必要ありません。主婦が活躍しているジャンルとして、以下のような例が挙げられています*6

・モノを売る:ハンドメイドアクセサリーや衣類等

・教える:お菓子教室や接客マナー等

・相談に乗る:カウンセリングやヒーリング等

このようなプチ起業の場合は、「知ってもらう」「欲しがってもらう」ことを軸にし、ブログやSNSでの情報発信に重点を置くことも成功への近道です。

 

5.まとめ

 

漠然と起業を考えている人は、趣味の延長として事業を行っていくのか、それとも生活のための稼業を目指したいのか、目的によって手段も異なります。アイデアを形にするという意識を持って、まずは地域の身近な機関に情報収集に繰り出してみてはいかがでしょうか。講座等に参加すれば、同じ志をもつ仲間や先輩に出会える可能性もあります。声に出して相談を重ねることで少しずつ具体的にもなり、起業への道も開けてくることでしょう。

 

 

参照データ
*1参考)総務省統計局「平成 29 年就業構造基本調査 結果の概要」P10
https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2017/pdf/kgaiyou.pdf
*2参考)中小企業庁「中小企業白書(2011年版):第3部 経済成長を実現する中小企業」P200
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/h23/h23_1/110803Hakusyo_part3_chap1_web.pdf
*3参考)内閣府男女共同参画局「女性起業家を取り巻く現状について」P6
http://www.gender.go.jp/kaigi/renkei/team/kigyo/pdf/h28_0121_kigyo01_ss2.pdf
*4参考)内閣府男女共同参画局「女性起業家を取り巻く現状について」P10
http://www.gender.go.jp/kaigi/renkei/team/kigyo/pdf/h28_0121_kigyo01_ss2.pdf
*5引用)経済産業省「平成30年度女性起業家等支援ネットワーク構築事業 活動報告書」P14
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/joseikigyouka/pdf/30houkokusyo.pdf
*6参考)日本政策金融公庫「起業家応援マガジンVOL.104」
https://www.jfc.go.jp/k/pfcj/pdf/hou_190227.pdf
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