キャリア形成 働くコラム

転職時にも力を発揮 上司やお客様をうならせる発想力、企画力の鍛え方とは

転職時にも力を発揮 上司やお客様をうならせる発想力、企画力の鍛え方とは

単調な事務作業は、どんどんAIに置き換えられていくと言われる時代。

そのような中で、AIにはマネのできない創造的な能力を身につけておくことは重要であると言えるでしょう。

 

しかし、どうしても自由に発想するのは苦手だという人も多いものです。

誰でも発想力や企画力を身につけられるようにするには、どうすればいいのでしょうか。

 

 

1.「お客様のために」ではなく「お客様の立場で」考えてみる

 

「どんな企画を考えれば、ヒットを飛ばすことができるのか?」

 

それを明らかにするために、必死にいろいろなデータを調べまわったり、長時間にわたって会議で議論するのがビジネスパーソンの日常です。

 

ただ、どんなことをすれば面白いだろうかと考えるときに、どうしても自分の立場で考えてしまうものです。

そうなってしまうと、自分の価値観を相手に押しつけるだけになってしまうでしょう。

 

売れる商品やサービスを開発するためには、お客様のことを考える必要があるというのは、誰でも理解できるのではないでしょうか。

 

問題は、お客様のことを考えるといっても、「お客様のために」考えるのと「お客様の立場で」考えるのとでは結果が異なるということです。

前者では、業界の常識や会社の都合をお客様に押しつけてしまいやすいのに対し、後者では、完全にお客様の目線で、お客様の気持ちになりきって考えるという客観思考です。*1

 

この客観思考を実践して成果をあげたのが、セブンイレブンの創業者として知られる鈴木敏文氏です。

客観思考で考えることによって、お客様が反応してくれるような良いアイデアを出すことができるようになります。

 

では具体的に、どのように違ってくるのでしょうか。

 

私たちの価値観は、「場」によって違ってきます。

行動経済学には「フレーミング効果」と呼ばれるものがあり、論理的にはまったく同じものでも、表現の仕方を変えるだけで受け取り方が異なってくることが知られています。*1

 

例えば、「冷やし中華」と言えば、真夏の食べ物だという固定概念があります。冬や春に食べるものではないという考えも固定概念です。

 

ところが、「暑いと感じたら食べるもの」だと捉えれば、イメージも変わってきます。

真夏に食べるものから、冬や春でも暑いと感じれば年中食べるものへと変化するわけです。

そうなると、年間販売数量も格段に違ってきます。

 

同じ商品であったとしても、このように見方を変えることで新たな需要を生み出すことになり、売上も変わってきます。

 

暑くなったら、何か冷たいものを食べたくなるというのは、お客様としては当然の心理でしょう。

それを無視して、夏以外に冷やし中華を出すのはおかしいと考えるのは、売る側の考えをお客様に押しつけてしまうことです。

 

前提条件や思い込みを排除することがいかに大事なことかがお分かりいただけるのではないでしょうか。

 

 

2.どのようにして発想を得ればいいのか

 

ただ企画ともなると、難しく考える人も多いかもしれません。

ひたすらデータを分析して、どすればいいのかをまとめ上げるという人もいると思います。

 

しかしそうすると、時間や手間がかかってしまい、内容も複雑化してしまいます。

 

実は、5W1Hを使うだけで、アイデアを簡単にまとめることができます。

新規事業の計画を考えるには、以下に示すようにWhyとHowをベースに考えをまとめます。

 

参考)「シンプルに結果を出す人の5W1H思考」渡邉光太郎著 P138をもとに筆者が一部補足

参考)「シンプルに結果を出す人の5W1H思考」渡邉光太郎著 P138をもとに筆者が一部補足

 

なぜその市場を狙うのか、なぜその人をターゲットにするのか、何をどのようにプロデュースするのかなど、説得力のあるロジックを組み立てるのに役立ちます。

 

5W1Hを組み合わせることで、このようにシンプルに考えを整理できます。

 

もちろん5W1H以外にも、ビジネスでは使えるフレームワークがたくさんあります。

ただ、これらのフレームワークは、全ての人が知っているわけではないということに加え、以下のような問題が出てしまうことがあります。*2

 

 

①提案書の見栄えのために、複数の無意味なフレームワークを盛り込んでしまう

 

②ただ機械的にフレームワークに情報を入れ込んで、列記・整理しただけの状態になってしまう

 

③なんでもかんでもフレームワークを使うことで、かえって思考が断片化・混乱してしまう

 

 

アイデアを整理するためにフレームワークを使って整理するというのはいいのですが、使い方を間違えると、かえって複雑化してしまいます。

 

何かを考えるとなると、どうしても難しくしてしまいがちです。

そうなると、大事なポイントが見えにくくなります。

 

アイデアを複雑化させてしまうと、それを他人に伝えようとなった時に、他の人が理解するのが難しくなってしまいます。

誰もが知っている5W1Hを使えば、多くの人とアイデアを共有しやすくなるでしょう。

 

 

3.アイデアに行き詰ってしまったら

 

企画には、何か目新しさが必要になってきます。

ただ、何か革新的なアイデアといっても、出すのは難しいものです。

なかなか面白いものが出ないで困る方も多いのではないでしょうか。

 

そこで、何がアイデアを生み出すうえで障害になっているのかを知れば、対処法も浮かび上がってきます。

 

行動経済学において、無意識的に考えることを節約しようとすることを「認知的節約」と呼びます。

とりわけ、認知的な負荷が小さい簡便な方法で判断することはヒューリスティックと呼ばれ、外見で人を判断することなどがあります。

また、バイアスと呼ばれる思考の偏りも知られており、変化したほうが有利であるにも関わらず現状を維持しようとする現状維持バイアスなどが知られています。*3

 

これらの無意識のうちに行われる人間の思考のクセを理解したうえで、それを意識的にやめるようにすればいいわけです。

 

あらゆる固定観念や過去の成功体験などを取り払ってゼロの状態から考えることは「ゼロベース思考」と呼ばれています。

 

先ほどもご紹介した冷やし中華の場合においても、「冷やし中華は、夏の食べ物だ」という固定概念を取り払ったことで、新たな販路を切り開くことができました。

 

ヒューリスティックやバイアスは、素早い意思決定を行う上では役に立ちますが、前例にとらわれない新しアイデアを出す上ではマイナスに働いてしまいます。

 

何か良いアイデアを出したいという時には、ヒューリスティックやバイアスにとらわれてしまっていないかというのを意識してみるといいかもしれません。

 

 

4.企画書のまとめ方と通し方

 

企画案がまとまれば、次は企画書です。

どんなに良い企画が思い浮かんだとしても、企画書が通らなければ企画を実現できません。

 

しかし、せっかくがんばってまとめ上げた企画書でも、NGになってしまうことは少なくありません。

どのようにしてまとめればいいのでしょうか。

 

企画書以外の文章にも言えることですが、ダラダラと長文を書くというのはNGです。

それでは多忙な上司に目を通してもらえません。

一文は短く、基本コンセプトは一言で明快に、分かりやすくまとめることが求められます。

 

また、事実を裏付けるデータがあるというのも重要です。

データさえあれば、反論される心配も少なくて済みます。

 

企画書の内容は、読み手の頭の中にすっと入り、読み手が納得できるものであることが大事です。

 

そして、それ以外にも大事になってくるのが、協力者や賛同者を集めることです。

実は企画を通す上では、発想力以上に「根回し」が大事になってくるのです。*4

 

いくら企画の内容が良くてゴーサインが出たとしても、いざ実行段階で「関係者からの協力が得られませんでした」などということになっては、せっかくの企画が潰れてしまいます。

上司としては、そのような途中でつまずいてしまう可能性の高い企画案は通したくないと思うものです。

ですので、企画を考える段階から協力してくれる人を集めておくということが重要になってきます。

 

「根回し」と言うと後ろめたさを感じる人も多くいますが、考えた企画を確実に実行するためには、どうしても必要になってくるのです。

 

企画というのは、一人で難しく考えるものではありません。

関係者に取材をして、どのようなニーズがありそうなのかを探り、さらに、企画の実現のために事前に協力者と連携する必要があります。

 

アイデアに自信が無いという人でも、周囲の協力を得られれば、うまくいくかもしれません。

 

企画に携わるような仕事をしてみたいという方は、ぜひ参考にされてみてはいかがでしょうか。

 

参照データ
*1 参考)「鈴木敏文がやっている「お客様心理」の読み方」伊敷豊著 P4,5,134~136
*2 参考)「シンプルに結果を出す人の5W1H思考」渡邉光太郎著 P20,21
*3 参考)「知識ゼロからの行動経済学入門」川西諭著 P28,56,57
*4 参考)プレジデント2008.6.2号「読まれる文書、バカにされる文書」P42,43
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コミュニケーションマインド代表、心理カウンセラー(NLPマスタープラクティショナー) 職場の人間関係、発達障害によるコミュニケーションの悩み、その他、コミュニケーションスキルの不足による問題の解決を脳科学と心理学を用いてサポートしています。

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